脳損傷の後、病院での治療やリハビリテーションによって、身体機能や高次脳機能は一定回復します。病院でのリハビリテーションが終わると、もう良くならないのかと不安に感じると思いますが、高次脳機能障害のリハビリテーションは実際の生活に戻ってからが本番です。生活の仕方によって、長期にわたってまだまだ変化していきます。脳に傷があるので、完全に元どおりというわけにはいきませんが、新たに工夫を取り入れながら自分でできることを増やしていく、できることから取り組んで少しずつ生活を広げていくことが、高次脳機能障害のリハビリになります。生活を支え広げていくために各種制度やサービスがあります。上手に活用していきましょう。当センターホームページの「高次脳機能障害とは」にある「支援の流れ」の「発症からのステップ」もご覧ください。
国が定めた高次脳機能障害の診断基準においては、「先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とするものは除外する」とあります。症状だけ見ると共通するものがありますが、症状の経過や支援体制が異なるため、これらは高次脳機能障害には含まれません。
当センターホームページで示す「高次脳機能障害」及び当センターが支援対象とするのは、国が定めた診断基準に該当する高次脳機能障害の方です。
高次脳機能障害は、後天的な脳損傷をきっかけとして、それまで獲得してきた認知能力の一部が低下するもので、脳の器質的変化が見られます。一方発達障害の場合は、現在のところ、認知能力を獲得する前(発達前)からの障害であると考えられています。
発達障害の方への支援として、その人の苦手な認知機能を工夫により補ったり、環境を調整して生活しやすくしていくことが有効とされていますが、それらは高次脳機能障害のある方への支援でも大変役立ちます。
認知症と異なる点は次の2点です。
①高次脳機能障害は脳損傷の時期が明らかである。
②高次脳機能障害そのものは進行性の障害ではない。という点です。
高次脳機能障害は、頭部外傷や脳卒中など脳損傷の時期があきらかで、基本的には脳損傷時が一番障害が重く、リハビリによってある程度回復する部分があると考えられています。しかし、多くのタイプの認知症(アルツハイマー型認知症など)は、発症時期が特定しにくく、認知機能も含めて症状が進行していく変性疾患であることから、高次脳機能障害とは区別して考えられています。また脳血管障害の中でも脳梗塞を繰り返す場合などは、脳血管性認知症と診断されることがあり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行していくという点が高次脳機能障害と異なります。
ただし、高次脳機能障害の概念や支援方法がまだ十分に知られていないために、本来高次脳機能障害と診断すべき人でも認知症と診断されることがあります。“認知症”と言われている人でも、時期が特定できるような脳損傷のエピソードがあり、認知機能低下が進行するタイプではない場合は、高次脳機能障害の可能性があります。
当センターは、京都市内にお住まいの高次脳機能障害やその疑いのある方及びそのご家族、支援者の方が対象の高次脳機能障害に関する相談機関です。
症状のこと、就労に関すること、日中の過ごし方のこと、学校生活のこと、利用できる制度のこと、京都市地域リハビリテーション推進センターにある障害者支援施設のこと等々、どこに相談に行ったらよいかわからないときは、まずはご相談ください。ご相談いただいた内容によって、各々の窓口等のご案内や医療機関や支援関係機関と連携した支援を行います。その方の障害特性を把握し適切な支援を検討するために、これまでの医療やリハビリに関する情報、画像データ(頭部MRI検査結果等)などを取り寄せていただくようお願いする場合もあります。
京都市地域リハビリテーション推進センター障害者支援施設に関しては、こちらをご参照ください。ご利用をご検討される前にまず見学をお勧めしています。見学のお申込み等は、当センターにお電話でお問い合せください。日時などのご予約については、追って障害者支援施設の担当者からご連絡させていただきます。
〇京都市地域リハビリテーション推進センター障害者施設
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000003090.html
高次脳機能障害の診断には、脳の画像や神経心理学的検査(注意力や記憶力検査など)の情報が必要なため、まずは治療をされた主治医の先生にご確認されることをお勧めします。
当センターにご相談いただいた場合は、発症からの治療状況や発症後に現れた症状等のお話をうかがった上で、治療をされた医療機関で高次脳機能障害の診断が難しい場合などには、当センターでの専門医の診察をご案内することがあります。その際に、これまでの医療やリハビリに関する情報、画像データ(頭部MRI検査結果等)などを取り寄せていただくようお願いしています。脳損傷が確認できる画像データがない場合は、診察の上、外部機関に依頼し、MRI検査などを受けていただきます。また、当センターで注意力や記憶力などの検査を受けていただく場合もあります。
当センターの相談は無料ですが、診察・検査・診断書等にかかる費用は、一般の医療機関と同じで保険診療扱いになります。
なお、入院治療等を要するような脳損傷の経験(脳梗塞や脳出血、交通事故など)がなく症状が現れた場合は、高次脳機能障害とは考えにくく、当センターにご相談いただいても診断は難しいと思われます。
大人の高次脳機能障害と異なり、子どもの場合は脳の発達途上での脳損傷であることから、その後の発達や環境にともない症状が変化したり、小さい頃は症状が目立たなくても学校で求められる学習や人間関係などが複雑になるとついていけず、症状が目立ってくることがあります。そのため、長期的な視点でみていくことや、子どもの関わる周りの人に子どもの高次脳機能障害の特性を伝え、工夫や対応を調整してもらうことで、失敗経験による自信喪失などの二次的な問題を予防していくことも大切です。
当センターでは、子どもさんやご家族からの相談を受けて、必要に応じて主治医の先生や学校の先生方とも連携していきます。